キャンプに必要不可欠な道具のひとつにペグがあります。テントやタープの固定に使用するものです。形を整えたり、風に吹き飛ばされたりしないようにしっかりと地面に打ち込む必要があります。中でも上級キャンパーに愛されているペグが鍛造ペグです。鍛造ペグとはどのようなものなのでしょうか。ここでは鍛造ペグの特性と選び方及びおすすめの鍛造ペグを紹介します。
鍛造ペグの特性
鍛造ペグとは
鍛造とは金属材料をハンマーなどでたたいて形を作っていく製法です。鍛造に対して鋳造という製法があります。これは溶かした金属材料を型に流し込んで冷やし固めることで形を作る製法です。昔の鍛造は職人が一つ一つをたたき出していたので量産ができませんでした。しかし現在では、型に入れてたたく方法などによって鍛造でも量産が可能になっています。鍛造と鋳造の違いは、強度です。鍛造ではたたいて成型することから金属の粒子が整って非常に高い強度となります。これに対して鋳造は型に流し込むだけなので強度が鍛造より劣りますが、大量に生産できるので価格が安いのがメリットです。今では鍛造でも量産は可能ですが、鋳造ほどの数を量産することはできません。
鍛造ペグを使用するメリット
鍛造ペグのメリットの一つにあらゆるキャンプサイトに対応出来る万能性があります。キャンプサイトはさまざまな場所に開設されていて、その土質は一様ではありません。鍛造ペグは高い強度を持っていることから、あらゆる種類の地面に対応が可能です。硬い地面にもグイグイと刺さります。キャンプ場を問わないオールマイティーのペグです。鍛造ペグは刺さりやすいだけではありません。地面に対する固着力が高いことがメリットの二つ目です。刺さりやすくて、地面の深くまで入ることからテントなどを固定する力が強いことに特徴があります。鋳造との比較で述べましたが鍛造には強い強度があります。鋳造のペグでは地面にさすときに曲がったり、変形してうまく打ち込めなかったりします。使用するときに高い強度によって耐久性が維持されることが三つ目のメリットです。
鍛造ペグを使用するデメリット
鍛造ペグのデメリットで最初にあがるのは価格が高いことです。価格は高いものの耐久性があって長持ちするので、それだけの価値はあります。メリットにあらゆる地面に使用可能なことがありました。しかし、砂浜や雪の上のように摩擦力の小さい地面からは抜けやすいというのが二つ目のデメリットです。細くてまっすぐな鍛造ペグは抜けやすい特徴があります。この抜けやすさに対処するためには長いペグを選ぶのがコツです。通常のペグは20cm台ですが、40cm位の長さがあれば砂浜や雪の上でも抜けにくくなります。三つ目のデメリットはかなり重いことです。頑丈で深く刺さって頼りになるペグですが、スチール製V型のペグやプラスチックのペグと比較するとかなり重いので長い距離を運ぶ必要があるような場合には注意が必要です。
鍛造ペグ選びのコツ
地面に刺さりやすく、あらゆる地面に対応して耐久性のある鍛造ペグですが、目的に応じたペグを選ぶ必要があります。ペグを選ぶ際のポイントは長さです。ペグが短すぎると地面への固着力が弱くなります。その結果テントなどの固定力が低下して安全にテントを設営できません。長さの目安はテントの固定には20cm前後、タープの固定は30~40cmです。長さを揃えてオールマイティーに使用したい場合には25cm~30cmを選ぶと良いでしょう。
鍛造ペグの形状は楕円と真円の概ね2種類です。楕円のペグは打ち込むときに回転しません。回転しないことでしっかりと角度を保持して打ち込めるので設営が楽です。真円のペグは多くの種類が販売されていることから選択肢が広いことに特徴があります。ペグを選ぶときには何に使うかが大切です。前述の長さの目安を基準にテントに使用するか、タープに使用するかで決めておく必要があります。特にタープに使用する場合は風を受けたときに飛びやすいのでなるべく長いものを選んだ方が良いでしょう。
おすすめの鍛造ペグ
鍛造ペグとして日本のキャンプマニアの間で人気を二分するのが、エリッゼステークとソリッドステークの2種類です。この2種類を製造しているのは刀製造で培った高い鍛造技術で世界的に有名な新潟県燕三条エリアに拠点のあるメーカーです。
エリッゼステーク
エリッゼステークの通称がエリステです。村の鍛冶屋が製造するエリステには長さの違う3種類があります。18cmはテント用、28cmはオールラウンド、38及び48cmはタープが対象です。エリッゼステークのエリッゼには楕円という意味があります。名前の通り上から見ると多少楕円になっているペグです。地面に打ち込んだとき真円よりも楕円のほうが地中で固定されやすいことからこの形になっています。反対に楕円になっていることから、埋まった状態で90度回転すると隙間ができて抜きやすいことが特徴です。エリステはカラーバリエーションが広いことでも知られています。
エリッゼステークアルティメット
強度の高い鍛造ペグだったエリッゼステークに刀製造の重要な工程の「焼入れ」を取り入れたのがエリッゼステークアルティメットです。焼入れによってペグの強度がさらに増しました。鍛冶職人が一本ずつ焼入れをする芸術とも言えるペグです。エリッゼステークアルティメットは村の鍛冶屋が製造しています。強度が高くなった上にエリステと同様の特性を継承しているのがエリッゼステークアルティメットです。
ソリッドステーク
ソリッドステークのメーカーはスノーピークです。ソリッドステークはソリステと通称されています。ソリステは刺さりやすい先端形状と打ち込みやすい頭部形状によって硬い地面に打ち込みやすいといったことが特徴です。一般に鍛造ペグは砂地には不向きですが、ソリステの長いペグは砂地でもしっかりと利きます。ソリステのもう一つの特徴は、強度と粘り強さに評価の高いS55Cと呼ばれる特殊なスチールを使用していることです。これによって強度ばかりでなく、折れにくい粘り強さも併せ持っています。
鍛造ペグはエリステとソリステだけではありません。
アルペグ
アルペグは共和鍛造所の製品です。従来の鍛造ペグの欠点は重量でした。反対に他の軽量のペグでは鍛造ペグの強度を得られません。ところが最近になってアルミ系金属を鍛造加工したペグが販売されて話題になっています。アルミ系の金属を使用することで軽量化した上に鍛造することによって強度を上げることに成功したのがアルペグです。アルペグは重量が鉄の3分の1のアルミダイカストを使用しています。複雑な形状処理によって軽量で短くても抜けにくいペグを実現しました。
スチールソリッドペグ
コールマンも鍛造ペグを販売しています。スチールソリッドペグはハンマーがあたる部分が突出していません。エリステやソリステでは頭のハンマーが当たる場所が突出しています。一体化した単純な形状にすることによって低価格を実現した製品です。
鍛造ソリッドペグ
キャプテンスタッグ製の鍛造ペグです。地中に刺さる部分が途中から細くなっていて、打ち込み易くなっています。
鍛造ペグ
クイックキャンプは初心者用キャンプ用品を得意とするメーカーです。知名度は落ちますが、初心者には取り扱いやすい長さと形状になっています。
耐久性があって長年使用できる鍛造ペグ
従来のキャンプではペグは消耗品でした。しかも地面の状況によって刺さらなかったり、強風を受けて簡単に抜けたり、打ち込むときに簡単に変形したりすることが問題でした。鍛造ペグは価格は高くなりますが耐久性があります。最大の魅力は強度です。奥深くで地面をしっかりとつかんで強風でも簡単に抜けることはありません。消耗品ではなくキャンプの必需品として長年使用できるものです。